サンダーとの格闘記

CATEGORY | 日記
POSTED | 2018/03/13
今日は天気が良いせいか筆が止まらない。

サンダーが家に来て一年くらい経った頃だったろうか、同居人の売れない役者にも少しずつ仕事が舞い込んで来ていた。今までになかった雑誌の仕事も来るようになった。明日は以前、共演させて頂いた大御所の方と雑誌でトークの企画。早めに寝るつもりでいた。

テレビを眺めながら、手作りのキャットタワーの一階部分で遊んでいる子猫を片手で相手していた。その頃、売れない役者はギャラが入ったのか、財宝温泉というミネラルウォーターを20リットルの箱で定期購入していた。しかし、水を使い果たすと段ボールの箱だけが残ってしまう。捨てればいいのだが、売れない役者は何かこの段ボールで再利用ができないかと考えた後、ひらめいたのがキャットタワーだった。丁度、正方形のキューブ状の段ボールは重ねて、通り道の穴だけ開けてやればもう立派なキャットタワーのできあがりだ。

しかし、段ボールを5つくらいを並べたり、重ねたり、苦心して作ったキャットタワーで子猫は全然遊ぼうとしなかった。何が気に入らないのか一階の部分に入ったっきり他の部屋に行かない。この時点で役者はヘソを曲げていた。

やることもないので掃除機をかける事にした。それまで一人暮らしの時は、クイックルワイパー的なもので済んでいたのが、猫が来たせいで掃除機を買うハメになった。掃除機の電源を入れると、さっきまでキャットタワーでおとなしくしていた子猫が、急に掃除機に向ってシャーっ!って牙を剥いて猛々しい姿を見せた。その顔が可愛くて、アホらしくて、思わず役者は掃除機の柄の部分で戦う姿勢を見せてしまったのである。こっちは遊んでいても、子猫は初めて見る掃除機に本気でびびっているらしく、猫パンチを食らわして来た。それがまたアホらしくてさらに追ってしまった。

子猫はその小さな脳内にアドレナリンが出まくっていたらしく、部屋の壁を、普通の壁を天井のあたりまで登った。恐るべし小動物。お陰で壁紙に爪の跡ががっしりついた。

「ああーーー!?」

売れない役者は叫んだ。

「敷金返ってこなくなるだろーーー!」

さっきまで遊びだったのが遊びじゃなくなった。

小動物の10倍は大きい、30歳を越えた役者は、この生まれて間もない小動物への報復として掃除機の柄で威嚇してみた。

「シャーっ!」目が充血している。

もういい加減やめよ。

掃除機をしまうとため息をつきながら、引っ掻かれた壁紙を何とか誤魔化そうと指で擦ってみたが、余計にボロボロと崩壊し始めたのですぐに辞めた。子猫はベットの上でこっちに尻を向けてふて寝している。半分冗談で、コラ!って首を触ろうとしたその瞬間。まだちっちゃな小動物がいきなり振り返りざまに、役者の親指の付け根に噛みついたのである。

「ぎゃーー!」

ちっちゃな牙が食い込んでる、食い込んでるって!

牙の脇から赤い血がピューって3cmほど吹いた。子猫の口の周りには飼い主の血が付着して、充血した目をした子猫はホラー映画のカワ怖いキャラのようだった。

「あーーー!」役者は叫んだ。

以前、いとこのおじさんが猫に噛まれてそのままジムに行ったら、見る見るうちに腕が腫れて来た切断寸前まで行ったホラーストーリーを思い出した。役者は傷口を口で咥えながら、

「お前なんか浅草帰れ!」と暴言を吐き、

近くの救急病院に行く支度をし始めた。明日は撮影だ。

小動物も悪かったと思ったのかクークー泣いている。

近くの病院で狂犬病の注射を打ってもらった。帰り道、歩道橋を登りながら、役者は飼い主として本気で反省した。

家に帰って見るとサンダーがいない。家出か?どこを探してもいなかった。

ドアを開けて出て行ったらそれはそれで凄い。しばらく考えているとどこからかニャーと鳴き声が。洗濯機の下にいた。手を伸ばすと軽く拒んだ。首根っこを掴んで救出した。子猫は小さな口を開けてニャーと鳴いた。役者は子猫の目を凝視して、人間と猫の種別を越えて心の底から誤った、

「ごめんね。」

それまでは役者の足元あたりで寝ていた子猫が、その夜だけは役者のスネのあたりをしっかり抱きしめて寝た。

嘘のようなホントの話。



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