【editorial】旅の恥は書き捨て #4
完結編

CATEGORY | 日記
POSTED | 2017/11/22
タック・タイラーは皮のポーチに入ったビデオカメラを手に小雨のなか、家路を急いだ。
早く誰かに伝えたい。恐らく中古とはいえ、当時10万くらいするビデオカメラを100ポンドで買ってしまったのだ。1ポンド250円の時代だから2万5千円か。
そう悪くない。海外で掘り出し物を手にするというのはこういうことか。ドキドキしながら坂道を降りて行った。

裏木戸をくぐると、綺麗に手入れされたイングリッシュガーデンの奥にタイラーの宿泊している東屋が見えた。重い木戸を閉め、折りたたみ傘を小脇に挟むとタイラーは待ちきれずにビデオカメラを確認しようと皮のポーチのジッパーを下げた。いや、下げようとした。

「あれ?開かない。」

皮のポーチのジッパーはビクともしなかった。
「何か食い込んでるのかな?」

タイラーは東屋のドアの鍵を開けながら何度もジッパーを引っ張ってみた。開かない...。
雨が降りつけているのも気にせずに、タイラーは力任せにポーチを開けようとした。やっぱり開かない。
まあ、それより日本の誰に電話してみようか。はやる気持ちを抑えながら鍵を開けた。
「今日本は何時だろう?まあ、手っ取り早く、ミケランジェロ・タイラーにでも電話するか。」
部屋に入ると、折りたたみ傘を放り投げ、ソファに腰掛けた。
しびれを切らせたタイラーは台所に行き、ナイフを手にした。ポーチなんか破いてしまえ。
黒い皮のポーチに鋭いフルーツナイフを突き刺した。
ポーチの皮は簡単に切れ、ジッパーに沿って縦にポーチが開いた。

そこに横たわっていたのはビデオカメラでもない、電気製品でもない、なんと牛乳のパックだった。

タック・タイラーは事態を把握できず暫し、凍り付いていた。
「これってもしかして...」
まんまとトレインスポッティング野郎達にやられてしまった。
「俺としたことが... 。」

今頃あいつらはどこかのパブで、ギネスでも飲みながら、間抜けな東洋人の話に笑い転げてると思うと腹が立ったが、なぜか笑えてきた。 しばらくその牛乳パックを睨みつけた後、タック・タイラーは静かに台所に行き、牛乳の蓋を開け、白い液体を流しに放出した。


PLAY
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Farm-to-tableを体験
FUN , DESTINATION
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