【editorial】旅の恥は書き捨て #1
Would you like to buy a camera?

CATEGORY | 日記
POSTED | 2017/11/15
時として旅人は誰に見せつけるわけでもないのに旅上手を演じてみたくなる。一度行ったことがある場所、と言ってもホテルから半径100メートルくらいにあるお店に何度か入ったことがあるくらいなのだが、再び訪れると、ここが第二の故郷だ、みたいな顔してオープンカフェなんかで昼間からワインを飲んじゃったりしたりする。要するに知ったかぶりをしたいだけなのだ。
今から15年ほど前、タック・タイラーはロンドン郊外ハムステッドにいた。ここにはタック・タイラーの父、ミケランジェロ・タイラーの友人が住んでいて、その友人が邸宅の庭に建てた東屋のような場所に安く泊まらせてくれるのだ。 タック・タイラーはロンドン芝居見物で、この街に数日間滞在していた。
この日、芝居は夜から一つ観る予定があるだけで、午前中はのんびりと本でも読もうかと近所のスタバでラテをすすって時間を潰していた。自己紹介欄にも書いたように、15歳からアメリカで育ったタック・タイラーは一応英語も不自由ない。閑静なハムステッドの街角でシェークスピアを読みながらタック・タイラーはここが第二の故郷だとばかりにのんびりとした時間を過ごしていた。
窓の外を見ると雨が降り出して来た。傘を持って来ていないタック・タイラーは、これはいかん、と足早に店を出た。 するとその前に、オンボロの怪しげなポンコツ車が止まった。
通り過ぎようとするタイラーを呼び止めようと、運転席の痩せこけた男が窓をギーコギーコ降ろし、こちらに何か喋りかけている。視界の片隅で察した感じでは、かなり怪しい男三人、女一人の四人組がぎゅうぎゅう詰めになって車に乗り込んでいる。ちょうど映画「トレインスポッティング」に出てくるようなやばい奴らだ。
運転席の男はなにやらビデオカメラを片手にこちらに話しかけてくる。おそらくカメラは日本製で、日本つながりで何かくだらない差別ジョークでも言っているのだろう。こんなことアメリカでは日常茶飯事。タック・タイラーは無視して通過した。 いや、通過しようとした。その瞬間、タイラーの耳にコックニー訛りの英語で忘れもしないあの言葉が飛び込んできた。

「would you like to buy this camera?」

To be continued...
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